Whoops! Lasik!~レーシック手術の落とし穴

レーシック手術を受けた経験から、レーシック手術の落とし穴を語ります。レーシック手術を考えている人は参考にしてください。

レーシックの訴訟~いばらの道~

 レーシック手術によって後遺症を負ってしまった人に対して、「訴訟すればいいんじゃないの?」と思うこともあるでしょう。レーシック手術による後遺症を負った人で、潜在的に訴訟を起こしたいと考える人は個人的に何百人単位で存在すると考えます。なぜなら、今まで落とし穴で語っててきたように、レーシック手術による後遺症は不可逆で心身に重大な影響を及ぼすものだからです。

 最近、レーシック手術による後遺症に対する集団訴訟が起こっています。それまでにも個別の訴訟がいくつかあります。しかし、レーシック手術関連の訴訟は、ざっと調べましたが、累計原告数20人ほどと少なくなっています。なぜ、潜在的に訴訟原告となる人数が多いにもかかわらず、それが実際に訴訟につながらないのか、語っていきたいと思います。ただし、多くの訴訟に踏み切れない人の意見を聞いたわけではなく少数の、また自己の意見であることを前提としてください。

 

①訴訟にはお金と時間がかかります

 まず初めにこれですね。訴訟には莫大費用と時間がかかります。訴訟費用を稼ぐには仕事をするしかありません。レーシック手術の後遺症を負った場合、仕事を続けることが辛いにしても、仕事を続けないと生きていけないからやるしかありません。それなのに、生きていく費用+訴訟費用を稼ぐのは本当に大変だと思います。レーシック後遺症を負いつつ、仕事を続けつつ、訴訟もするなんてハードルが高すぎます。ですから、訴訟などは考える暇もなくひたすら現状に耐えて生活している人が多いと思います。また、余裕があれば訴訟したいけど、後遺症の程度が、かろうじて日常生活を送れるほどなので我慢して生活している人がいると思います。家族を持つ方も多いと思うので、人生をかけて訴訟するよりも、目先の家族の生活が一番なのは仕方がないと思います。それに、訴訟の資料集めには時間がかかります。資料を集めるためには通院が必要な場合もありますし、それは主に平日であることから、仕事との両立は難しいでしょう。

 

②そもそも、訴訟を起こせる状態(体調)ではない

 訴訟をするには、訴訟の証拠集めが必要不可欠であります。証拠を集めるためには、自ら眼科に赴き、検査を受けたり、診断書をもらったり、カルテの開示を行わないといけません。しかし、レーシック後遺症が発生した場合、まず身体的健康が害されます。ひどい人によっては、一切外出できないほど光に弱くなっていたりします。この場合、証拠集めはともかく、弁護士に連絡を取ることすらできない場合もあります。また、心と体はつながっています。過矯正により自律神経が乱れること、光の見え方が変わることによりうつ状態になるなどすれば、心理的にも大きな負担を負いつつレーシッククリニックと戦っていく未来が見えずに訴訟に踏み切れないことがあると思います。

 

③訴訟に勝訴したからといって、目が元に戻るわけではない。

 訴訟をして、仮に勝訴したとしても、もらえるのは金銭だけです。それも、人ひとりの人生が破壊されたことに対しては過少ともいえる微々たる金銭賠償だけでしょう。また、勝訴したとしても相手方が任意に金銭賠償に応じない場合はさらに強制執行をかけなければならない。このような負担を負ったとしても、目が元に戻ることはありません。まぁ、レーシッククリニックが敗訴して、レーシック手術の危険性、後遺症が大きく報道され、認知されれば研究のメスが入ることはあるかもしれないので、間接的には訴訟することも目を元に戻す希望にはなりえると思いますが、勝訴すなわち目の回復ではないので、訴訟を起こさない人もいるのではないかと思います。

 

④訴訟しても、勝訴する確率が低いから現実的ではない。

 一般的に医療訴訟は原告勝訴の可能性が低いです。なぜなら、医療機関が証拠を持っているという証拠の偏在性、そして相手が医師であることから知識の偏在性があるからです。訴訟においては、原告が後遺症がクリニックの過失によって生じたことを立証しないといけません。弁護士や裁判官も専門家ですが、医療に関しては素人です。ですから、立証に関しては専門医の意見が非常に重要な役割を果たします。しかし、専門医が診断書を書くことを拒否したり、当たり障りのない診断書しか書かなかったり、当たり障りのない意見しかしなかったりします。これは、裁判で意見書を出す専門医も、被告であるクリニックの同業者だし、みずからも同じような手術をしているからです。端的に言うと、患者の肩を持って自分に火の粉が降りかかるのは嫌だし、同業者を売るような行為になるからです。患者は決して医師に、自分に有利になる診断書を書けとは言えません。ですが、そういった過度な願望でなく、「あなたの純粋な意見を記した診断書を書いてください」といっても拒否されることは多いです。こうした、医療訴訟の問題は専門の本がかけるくらい深いテーマですので、気になる方は調べてみてください(私は協力しない医師に否定的な意見ですが医師には医師の言い分があるようなので)。

 特にレーシック手術などの、健康な人に対する先進医療の場合には顕著だと思います。なぜなら、手術の後遺症などの症状の研究が進んでおらず、先進医療なのでクリニックごとの安全基準や検査基準がことなり、業界でもどの程度の手術が一般的かわからない又は確認できないことも多いからです。ですから、まじめに原告の肩持ちたい専門医がいたとしても、確信をもってレーシック手術と後遺症との因果関係が判断できないんだと思います。こんな理由で、やっても勝てないなら訴訟しないほうがいいということになり、訴訟を断念する方が多いです。

 

 診断書を書いてくれない医師はともかく、訴訟相手のレーシッククリニックに対しては、やり方がひどいと思います。ここからは私の愚痴を書きます。

 

 10年以上前ならまだしも、レーシッククリニックは、過矯正やコントラストの低下、ハログレアや眼位の異常が生じることはわかっているはずです(というか、どのような後遺症が出るかわからないのなら認可されてはいけない術式だとおもう…)。だって現に症状を訴える患者がいるのですから。それも10や100ではない数です。これは日本だけでなく世界の学会で発表されていることです。しかし、それをわかっていながら、クリニックは、レーシック手術前に患者の眼位を測定したり、コントラスト感度を測定したり、収差を測らなかったりします。測定しない項目なので、レーシック手術前のデータがないんですよ。そして、手術前のデータがないから、手術後にデータを測定したとしても、レーシック手術により後遺症が出たと判断できないのです。いわばクリニックが意図的に立証妨害しているようなものなのです。レーシック手術自由診療で野放しにされていることも拍車をかけます。だって、どんなクリニックも症状を訴える患者がいても、手術前に測定することはないよって開き直ります。そうすれば、レーシック手術において、眼位測定やコントラスト測定をしないことが一般的になりますよね?とくに、相当の手術数を占める大手クリニックが測定しないんです。そうすれば測定しないことが一般的になります。医療訴訟においては、医師はその当時の医療水準に照らし、一般的な医師の注意義務を果たせば過失がないとされるのが判例です。ですから、測定しないことが一般的だし私たちは悪くないよってなるんです。みんなこんな測定はしないということで、自ら過失が認定されにくい環境になっているんです。逆にきっちり測定すれば手術のボロがでるからデメリットしかないんですよ。だから、いくらレーシック難民の人が被害を訴えても、検査項目の改善すらないんですよ。レーシック難民のれんこんさんは、手術前に眼位の検査を徹底してくれと主張しています。私も、被害を受けている人が相当数いるのであるから、術後のアフターケアを考えるのなら当然に術前に検査すべきだと思っています。ていうか手術前にちゃんと検査して、受けてはいけない人をきちんとスクリーンにかけるべきです。やったら元に戻せないんですから…

lasikganni.hatenablog.com

 この点については、子宮頸がんワクチンの構造と似ていますね。ワクチンを接種する前に健康な人は体の隅々まで検査しません。ですから、ワクチンの副作用が出ても、「術前からあなたには病気の因子があった」「ワクチン接種で後遺症が生じたかはわからないじゃないか」って言われるんですよ。検査しないのだから、術後に検査したところで、検査結果の術前術後の比較ができず証明のしようがありません。まぁたとえ測定で来たとしても、他の症状で~とか、新たに病気にかかった~とか言って言い逃れするんでしょうけどね…

 上記の立証困難性は一般的に言われるもので、訴訟においては裁判所は立証責任の軽減や転換を行い、原告の立証負担を軽減することがあるので、すべての医療訴訟でこうなるわけではなく、事例判断されるということです。ですから、レーシック手術における訴訟でも、レーシック手術が健康な人に行う必要でない手術であるという側面を重く見て、一般的な手術よりも説明責任の程度や、事前の検査の程度を加重した判断がされてほしいと思います。

 また子宮頸がんの話を出してしまいましたが、この問題が大きく取り上げられて苦しむ人を見て、他人事とは思えないからです。自分がレーシック手術による後遺症を負うまではこうした医療事故を見てもなんとも思いませんでした。ですが、今はわが痛みのように辛さがわかります。まぁ私みたいなしなくていい手術をして自滅したぺーぺーと一緒にされたくないかもしれませんが…。私自身は死ぬほど苦しいですが、過度な自己責任論が発達した日本では、レーシック手術の問題は自己責任で片付けられそうですからね…。

 まぁともかく、以上が、レーシック手術の後遺症を負った人が訴訟に消極的になる理由でした。私は手術前のずさんな検査の取り方や、一見し異常がわかる後遺症がないので訴訟に参加できるかはわかりませんが現在検討中です。次回に現在行われているレーシック手術集団訴訟のメリットを書きますが、現在レーシック手術の後遺症に悩んでいる人がいましたら、ぜひあきらめずに医療問題弁護団にお電話ください。みんなでできることがあります。

医療問題弁護団

 今回も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。今回の記事は訴訟という非常にセンシティブな話題だったので、反論したい医師のかたも多いと思います。ですが、後遺症にぶち当たって、訴訟にぶち当たって一人の患者として感じたことをありのまま書かせていただきました。患者はこんな気持ちなんだなとわかってもらえると幸いです。